職業としてのAV女優

中村淳彦『職業としてのAV女優』、幻冬舎新書、2012

これはかなり驚かされた本。著者は、『名前のない女たち』、宝島社、2002ですでに知っていたので、この本は後日譚のようなものかと思って読んでみたら、まるっきり話が違っている。

名前のない女たち』に出てきたAV女優(企画モノ)たちは、ほとんど病んでいるような人ばっかりだったのだが、新著を読むと、もはやアダルトビデオ業界ではそういう人達はお呼びでないとのこと。アダルトビデオの制作本数は増えたが、それ以上に女優の供給も増え、見た目がきれいか、はっきりした「売り」(デブ、人妻、看護師のような特殊資格、ロリータ、有名大学卒など)がないとそもそもこの業界で女優になることすらできないのだという。

しかも一番下の企画モノの出演女優の最低日当は3万円。そんな安い金額で、どこで出演の事実がバレるかわからないのに、常に出演希望者は需要を上回っているとのこと。副業としてAVに出ている企画モノ女優だと月収は15万円程度らしい。

最上級の単体、その次の企画単体、最下級の企画というAVの階層構造、女優のギャラ、制作費、収益構造ほか、基本的な事実がきれいに整理されている。90年代までのヤクザがらみや、ひどい契約違反(本物のレイプなど)は、ほとんど姿を消し、アダルトビデオは普通の制作業界の一つとして、「健全化」されたということだ。その中で使いにくいメンヘルの人なども、必要のない人として淘汰されていったとのこと。

単体で売れる一部のスター、芸能人出身者を除くと、収入がこんなに低いのになんで脱ぐのかということになるが、出演者側から見れば「楽に稼げていい」「万一バレても、それはその時のこと」「セックス好きなので、そういう仕事もしてみたい」ということで解決済みになっているらしい。

そういえば、今年のはじめにあるピアニストがAVに出演していたという疑惑が騒動になり、体の細かい特徴がチェックされて「ほぼ本人間違いない」ということになっていたのを思い出した。ピアノでデビューしようとするような人が、アダルトビデオなんかになんで出るのかと思うが、楽なバイトだと思って出演する人が増えているということなら、それも納得。

著者は「AV女優でもしようかなと思っている女性や、その親はこういう事実を知ってから考えろ」とあとがきで書いているが、まったくそのとおり。それにしても短い時間でビジネスの仕方があっという間に変わってしまっていることにはおどろくほかない。