千住家の教育白書

千住文子『千住家の教育白書』、新潮文庫、2005

芸術家千住三兄妹のステージママ、千住文子氏の家族エッセイ。

いちおう子育てが中心なのだが、自分の結婚、両親の死、夫の死など、文庫本で270ページ程度のボリュームにしては内容は盛り盛りである。

読んでみると、本当の意味でステージママだったのはヴァイオリン弾きの千住真理子に対してだけで、まあ楽器は子供の頃からやっていないとものにならないから仕方がないが、千住博千住明は、高校の時に進路を芸術に定めていて、慶応高校から東京芸大に行ったという話。まあ絵描きや作曲家は成長してからでもなんとかなるが、これは親がそのように持っていったというよりは、本人が自覚してそういう進路を進んだわけなので、親は後押しをしただけ。

千住真理子のヴァイオリンを除けば(これも当然ヴァイオリンの先生についているわけで、親が音楽を教えているわけではない)、あまり教育らしい教育をしたようすも書いておらず、たぶんこの本を読んで子供をエライ人にしようとでも思っているような親があてにしている「慶応幼稚舎への入れ方」などほとんど書いていない。勝手に遊んでいたら入ってましたというような感じ。んなわけないだろうと思うが、芸術家は子供の頃から光っているのかもしれない。

それにしても、著者の家族自慢にはほとほと辟易させられる。自分を直接アピールするのではなく、「こういう家族の中にいる自分がエライのよ!」という感じ。別に著者自身は芸術そのものに入れ込んでいるわけではないので、子供ががんばって芸術をやりました、という以外のことは書けないのである。

また、それぞれのエピソードが妙に芝居がかって盛り上げられていることにもげんなりする。読んでいておなかいっぱい。なんで家族の話にここまで盛り上がりが必要なのか?よくわからない。

まあ母親のすることなんて、子供を見ていることくらいで、ほかに特別にすることもないのだろうが、だったらこの本自体、別に要らないでしょ、という内容。解説を書いている重松清のおべんちゃらも非常にウザい。