平常心のレッスン

小池龍之介『平常心のレッスン』、朝日新書、2011

宗派仏教から抜けた上で、まめに仏教(著者は「仏道」という)を説き、本を書いている小池龍之介師の本。内容はタイトルのまま、「どうやって平常心を保つか」という方法についての本。

「いい」「悪い」という判断を停止しろ、うれしいとか、悲しいとか、腹が立つといった感情に振り回されるな、「慢」=プライドにつかまるな、という著者の説法は、ちゃんと経典の教えに沿ったもの。それをきちんとわかりやすく摘示しているのはいい。

著者がテレビのトークショーに出演しているのを見たことがあるが、非常に真面目な僧というイメージ。それでいて押し付けがましいところがないので好感度は高かった。

しかし、この本の内容を実践できるのか?というと、自分には苦しい。自分の心が非常に弱っているときだったら、ある程度はできるかもしれない。でも元気なときだと、この本が説いている「平常心を保ち、心穏やかに生きる」というそのことが自分にはできない。

この本によれば、まさにそういう我執、我欲が、あなた自身をさいなんでいるのですよ、ということになる。確かにそう思う。この本では「自分の心を子供のように扱え」「こうしなければならない、という状態から自分を解放しろ」「完璧な自分を求めるな」とも書かれている。そのことの正しさは直感的には感じる。ただ、実践は、となると…。

この本は一回読んで終わりにする本ではなく、ドリルのように、自分を慣らすための道具として折に触れて開くべきものなのだろう。少しでもこの内容を自発的に受け入れられるような状態になれればよいと思う。