動員の革命

津田大介『動員の革命 ソーシャルメディアは何を変えたのか』、中公新書ラクレ、2012

ソーシャルメディアの力というのは、既存メディアで言われているような「誰でも情報発信」というようなことではなくて、ネットがリアルとつながることで、これまでとは比較にならないくらい低コストでたくさんの人を動員することができるようになったことですよ、という本。

日本のソーシャルメディアの二大サイトはツイッターフェイスブックで、利用者数は両方ともおよそ1700万人程度だという。パソコンでインターネットにつないでいる人が約9400万人、そのうちウェブページを見ることを目的で使っている人が約4000万人ということなので、その3分の1から2分の1がソーシャルメディアを使っているとのこと。しかも2010年1月の時点ではツイッター利用者は300万人程度だったので、爆発的に増えていることになる。

なぜソーシャルメディアの利用者が増えたのか、社会行動の動員にソーシャルメディアがどう使われているのか、これからどう使えるのか、といったテーマについて、著者の津田の文章と、モーリー・ロバートソン宇川直宏家入一真中沢新一いとうせいこうといった人たちとの対談、鼎談で本ができている。

イラク戦争の際に、日比谷で行われたデモの動員数が主催者発表で5万人程度ということになっていた。ロンドンでは50万人、ニューヨークでもそれに近い数だと言うことだったので、日本ではデモははやらないと思っていたが、最近ではフジテレビの韓流推し反対デモですら2000人、反原発デモで1万5000人くらい平気で出ている。既存の大組織がほとんど関わっていないのに、ネットで呼びかけるだけでこれだけ人が集まっているのだから、確かにあなどれない。

この本では政治目的というだけでなく音楽とか、もっと楽しめる要素を入れていけばさらに多くの人を動員できると言っている。そこは動員を組織する人の力量次第だと思うが、ソーシャルメディアのおかげで動員コストが非常に下がっていることは事実。近いうちに大規模デモが日本でも見られることになるかもしれない。これはおもしろい。