朝日新聞記者のネット情報活用術

平和博『朝日新聞記者のネット情報活用術』、朝日新書、2012

著者は朝日新聞編集委員(IT担当)。「新人記者のためのネット取材講座」などのこれまで書いた内容をまとめて加筆したもの。著者は、ネット活用においては、「収集」「保存」「確認」「編集」「発信」「共有」「安全」の7つの次元が大切だと言っていて、それに従って著者自身のネット活用法を実践的に書いている。

「収集」「保存」のところは、特別に変わったことをしているわけではないが、やるべきことはきちんと押さえられている。それよりも、「確認」「編集」「発信」といった、プロがちゃんとやらなければならない部分が非常に参考になった。そりゃ新聞記者がwikipediaの記述をそのまま引用して記事するわけにはいかないから、と思っていたら、外国では実際にwikipediaの記事がそのままニュースとして転載されて、しかもそれがトラップだったので大騒ぎになったという例があるそうで、そういうこともちゃんと念押しをしておかなければいけないらしい。もちろん、書いてあることは、ちゃんと出典をさかのぼって確認するという手当然のこと。

ソーシャルメディアの使い方についても、かなりページをとって書かれているが、「ソーシャルメディアを使うことはそれ自体が目的ではなく、エンゲージすることが目的」という指摘は大事だと思う。

最後の部分で、新聞と新しいメディアの関係についても書かれているが、いい意味で朝日新聞の記者らしくなく、「ニュースはサービス」「デジタル・ファースト、プリント・ラスト」「情報が会話になる」などなど、新聞社が新しい環境に適応しなければならないことがちゃんと書いてある。といっても、こういう意見を持っている人が、メディア編集や経営の方にはなかなか行けないのが現実なのだが。