日本社会の歴史 上

網野善彦『日本社会の歴史』上、岩波新書、1997

網野日本史の上巻。日本列島(著者はただ「列島」と呼んでいるが)のはじまりから、9世紀まで。

網野善彦の「日本」は人為的な名称で、自然に「日本」ができたわけじゃない、という説がすがすがしいほど貫徹されていて、7世紀の浄御原令まで、「日本」もないし、「天皇」もない、と断言されている。従って、そういう言葉も一切使われない。「日本列島」という言葉ですらなかなか使われないのは、北海道や沖縄の一部=先島諸島が「日本文化圏ではない」ことが強調されているため。

このあたりは網野先生の持論なので、いまさらどうということはないが、高校の日本史教科書の記述はいまはどうなっているのだろう。そちらに慣れてからこの本を読むと相当違和感を覚えることは必至。

といっても、古代史はほとんど頭に入っていなかったので、さくさくと楽しく読めた。唐帝国朝鮮半島との関わりが詳述されているのも、まあいいでしょう。この本が出てからもう15年も経っているのだが、岩波新書の中では今でも売上上位だときく。内容のおもしろさもあるが、この読みやすさはけっこう貴重だと思う。