東大脳の作り方

安川佳美『東大脳の作り方』、平凡社新書、2006

前に読んだ同じ著者の医学部生活の手記がおもしろかったので、前著のこちらも読んでみた。こちらの方は著者の受験日記のようなもの。受験生の手記といっても東京大学理科三類なので、エライわけである。

小学校以前の時期から、大学に入ってからの時期までの生活態度、勉強の仕方その他もろもろのことが書かれているのだが、とにかく小さい頃から親がつきっきりで徹底して仕込んでいる。もちろん幼稚園の段階で勉強を教えているわけではないのだが、課題をやり抜くこと、集中、達成とそれに対する報酬、といったようなことを身につけるように、親(この場合は父親)が厳しくしつけている。

あとはやる気というか、高い目標設定とプライド、それを追求する努力が著者に内面化されていることが成功の要因。実際、著者にとっては東京大学理科三類というのは、「一番入るのが難しいからそこを目指した」という以上の意味はないようで、医者の仕事がどういうものなのか、それに自分が適応できるのかについて考えた形跡はまったくなし。それでも目標を達成したのだからまったく後悔することはないと断言するあたりはさすが。親の仕込みが完全に内面に張り付いていて、あとは自分で目標設定をして努力を積んでいる。

それから学校。さすが桜蔭というところだが、周りがほとんど勉強していて、チャラチャラ遊んでいる子供がほとんどいない。わざと書いていないのかも知れないが、中学高校時代の記述なのに、男のことなど毛の先ほども出てこない。それで別におかしなこととは思われないような学校だということなのだろう。

特別な才能というわけではないが、この姿勢は簡単に身につくものではないだろう。「これは自分(または自分の子供)には無理」ということを早く理解するためには役に立つかも知れない。