新聞消滅大国アメリカ

鈴木伸元『新聞消滅大国アメリカ』、幻冬舎新書、2010

アメリカでは新聞は消えつつあります」という、いまさらなにを、というお話をしている本。著者はNHKのディレクター。ギャラクシー賞奨励賞を二度受賞ということなので、それなりにがんばっている人なのだろうとは思うが、同じ事は前からさんざん言われているので、「だから何?」という感じ。

この本の一番クサイところは、「新聞がなくなると民主主義がダメになる」という著者の主張を他人の調査(プリンストン大の先生)の口を借りて、わあわあ言っているところ。だいたい「新聞がなくなったから、政治参加の積極性がなくなった」のか、「政治参加に積極性などもともとなく、従ってニュースを見ようという気も怒らないので、結果として新聞が読まれなくなった」のか、どっちが正しいのかはよくわからないのに、一方的に主張を押し付けようとしているところが、いかにもマスコミ業界人という感じ。テレビも新聞も業界人の意識は大して変わらない。

結局著者の「問題意識」は新聞がつぶれれば次はテレビというだけのこと。民放局はもともと広告依存で、NHKは受信料制度があるわけだから、その影響をちゃんと考えることが先だし、日本のクロスメディア・オーナーシップのあり方を考えるほうが先だろうと思うが、そういう考えは出てこないらしい。読むだけムダ。くだらない。