フジモリ式建築入門

藤森照信『フジモリ式建築入門』、ちくまプリマー新書、2011

藤森照信の本業、建築史の入門書。いきなり「建築とは美だ」と宣言して、それに沿って話が進んでいく。美だというのは、建築は実用品ではないということ。ピラミッドの時代から19世紀までのヨーロッパ建築の歴史が連綿とつづられるが、その本質を形成しているのは、神殿建築、教会建築で、要するに「神の家」ということ。

最後の章が日本の建築にあてられていて、ここだけは住宅建築の話をしている。ヨーロッパの建築が時代によって決まっているのに対して、日本の建築は用途によって決まっている。そして、ヨーロッパでは脇役にすぎない住宅建築が主役に近い重要性を持っているので、日本の建築史を概観する場合には住宅を見ていればいいというお話。

説明は非常に明快で、それぞれの時代の建築の特徴と、それが成立し、変遷した理由について、はっきりした説明がついている。この本の内容がちゃんと頭に入ってから、他の本を読めばいいという意味で、ちゃんとした入門書になっている。

19世紀以後の建築はこの一冊には書き切れないので、別の本が必要と述べられているので、おそらくこの本の続編をなんらかの形で書くつもりなのだろう。かなり期待して待つ。