根本敬 広島解毒波止場

「広島解毒波止場」、根本敬、2011.11.3、原爆資料館、福本食堂、ヲルガン座

根本敬を広島に呼んできて一日イベントをするという企画。かなりとんでもないな・・・。昼の部は12時に集合して、原爆ドーム前から原爆資料館を見学、その後福島町(広島市西区の同和エリア)で「でんがく」(豚や馬の内臓の天ぷら)の昼食、その後をヲルガン座で自作の絵について、根本敬イラストレーターの河村康輔によるトークショーというもの。

原爆資料館は祝日のせいもあってか、かなり客多し。「でんがく」は初めて食べたが量がものすごく、しかも衣にもホルモン自体にも脂がたっぷり。これはまさに肉体労働者のための食べ物。広島では福島町と隣接のエリアにしか、この料理を出すお店はないので、ある意味貴重なもの。トークショーはまあ、根本敬の絵が好きな人にはたのしめただろう。

本当に面白かったのは、夜の部のビデオを上映しながらの根本敬単独のトークショー。これもヲルガン座でのショー。根本敬自身はあまりくだくだしく説明はせず、「とにかく映像を見てください」というスタンスなのだが、この映像がかなりキテる。最初は、中目黒?にあったという「電波喫茶」。「トランシーバーの電波に侵略されている」と信じ込んでいるおばさんがやっている喫茶店の映像。店の外一面に明らかに電波な張り紙が貼られていて爆笑。おばさんは電波を防ぐと称して、外出時にはいちいち扉にガムテープで目張りをしている。自分が家にいないのに、電波を防ぐ必要あるのか?というツッコミは野暮らしい。

それから金嬉老事件の犯人、金嬉老ご本人へのインタビュー映像。安藤優子木村太郎がキャスターをしていた夕方のフジのニュースショーのもの。金嬉老が差別だ差別だと連呼しているわりに、ギターをもらって、それを太鼓代わりに叩いているのが笑える。根本敬金嬉老のお友達だったそうだ。

次は、80年代の大事件、勝田清孝連続殺人事件のワイドショー映像。テレ朝の朝のワイドショーが、この事件をしつこく取り上げているようすを40分くらい映していた。このワイドショーがかなり狂っており、勝田清孝が自社系列のクイズ番組に夫婦で出演した時の映像を流し、それを被害者の遺族に無理やり見せるという、何かのプレイだろうとしか思えないもの。出てくる被害者の遺族が、まるでテレビ局のサクラとしか思えないほど芝居がかかっているのに爆笑。映像を見せられるのを拒否する遺族に対してはレポーターがしつこく「どうしても見ていただきたかったですね」と食い下がっているのも笑える。

あとは、パリ人肉食事件の佐川一政関係の映像。叔父の佐川満男が元妻の伊東ゆかりとデュエットしている歌が、まるで佐川事件のパロディとしか思われないものでこれまた大笑い。ちなみにこの事件、フランスでは大顰蹙なのかというとさにあらず、被害者はオランダからの留学生でしかもユダヤ人ということで、狂人とユダヤ人が勝手にやっていた猟奇事件ということになっているらしい。根本敬佐川一政ともお友達である。

最後は内田裕也のライブに勝新太郎が乱入して、ライブをほとんど乗っ取ってしまうというほほえましい映像。勝新の客のつかみ方はそれ自体が芸術的なテクニックで、内田裕也がほとんど子供に見えるほど。勝新はひたすら「マイウェイ」を熱唱。内田裕也は思わず泣いている。爆笑である。

このレアな映像ネタをコレクションとして持っている根本敬のセンスはやはりただ者ではない。まったくおそるべし。