花神 総集編 最終回

花神」、総集編 最終回 「維新回天」、NHK、1978

花神の総集編、最後の回。長いから見るのがつらいとかまったく思わずに見られた。この回は冒頭で高杉晋作の葬儀があるので、完全に大村益次郎が主役の話。

大政奉還から大村益次郎の死までのおはなし。坂本龍馬が暗殺された後、鳥羽伏見の戦いは軽く流して、彰義隊の戦いと戊辰戦争、とくに長岡藩、河井継之助高橋英樹との戦いが中心になる。河井継之助はこの回から出てくる新キャラだが、大村からは敵役なので、おはなしにちょうどよくはまっている。吉田松陰高杉晋作は、大村益次郎の同じ側にいて、役が競合しているので彼らがメインになっている回では、大村が活躍できないのだ。その点、河井は敵としてもかみごたえがある役。

さらに薩摩藩士でありながら、大村をうらみ、実質的な大村暗殺の黒幕(原作ではそういうことになっている)になっている海江田信義中丸忠雄が非常にいい味をだしている。実質、こっちのほうが大村益次郎のほんとうの敵なのだが、薩摩藩士らしいド迫力で圧倒。

彰義隊の戦いは、大村益次郎の本作でのハイライト。幕長戦争では、大村の描き方があっさりしすぎのように思っていたが、それはここを見せ場にするための演出だったのだ。中村梅之助の作戦での細かい苦心がていねいに描かれ、大村の軍事的天才が遺憾なく発揮される。

最後は、桂小五郎がとめるにもかかわらず、大村が大阪に行き、そこで海江田の意を受けた元長州藩士に斬られるところ。斬られてからも大村はしばらく生きていたので、横浜からイネが大村を追ってやってきて献身的な看病をする。ここでの大村とイネとのやりとり、その後のイネとお琴のはじめての会見が味わい深い場面。主人公の死をこれだけていねいに描いた大河ドラマもけっこうめずらしいだろう。

最後に中村梅之助がビデオ出演して、大村が字を書く場面は、吹き替えなしで全部自分で書いたことを誇らしく語っていた。確かにこのドラマは、「伝七捕物帳」「遠山の金さん捕物帳」とは別の形だが、中村梅之助のテレビ出演作の中では文句なしの傑作、代表作。梅之助は舞台の人で、テレビ、映画の出演作が少ないからこのドラマは貴重品である。総集編はいまいち物足りないので、なんとか全話発掘されないかなあ。去年の大河ドラマアーカイブスでも本編は1話分しかなく、しかもそんなに重要な回ではなかったので、とても残念だった。本編が全話見つかったら、DVD-BOXでも必ず買うのだが・・・。