爆音と大地

「爆音と大地」、山村聡、中村雅子、加藤嘉ほか出演、関川秀雄監督、東映、1957

砂川事件を題材にしたドラマ。原作は赤江行夫『長官』だが、これは知らない。しかし映画自体はおもしろかった。

主人公は「用達庁」、つまり旧防衛施設庁=調達庁の長官、山村聡。長官になった山村は、基地問題で各地で騒ぎが起こっている中、なるべく穏便にことを済ませようとして、妙義山ではアメリカの要求を聞くが、砂川ではアメリカの要求を突っぱねる方針で、アメリカ側の担当官とも親交をふかめていた。ところが、アメリカ側の担当官が急に交代、アメリカは妙義山は返すが、砂川の基地拡張はどうしても実現させろと言ってくる。

山村の方針はひっくり返されてしまい、なるべく使わない方針だった警察力も使わざるを得なくなる。山村のめい、中村雅子は反対派の影響を受けていて、真っ向から山村を面罵。反対派も買収工作や切り崩しで内部はガタガタになっているが、山村聡の交渉は結局失敗。山村の方針に従わなかった強硬派の部下、加藤嘉を後任に推して職をやめるハメになる。

加藤嘉は強硬に警官隊を導入して測量を実施しようとするが、全学連も反対派に入ってきていて、大衝突になってしまう。結局測量は中止。反対派が喜ぶ中で、反対派の小屋で寝込んでいる中村雅子を山村聡が見舞いに行くのでした、というおはなし。

地元民の土地への執着、ナショナリズム、補償金、用達庁内部の関係、日米交渉等々、いろいろな問題がからんで問題が泥沼になってしまう構図は今の沖縄と同じ。視点が反対派からではなく、基地建設を推進する用達庁の側から見ているのでちょっとおもしろい展開になっている。最後に反対派が勝って、退官した山村聡が反対派を受け入れることになっているのは、まあご愛敬。

長官の山村聡もいい芝居をしているが、用達庁の部下を演じている加藤嘉が非常に味を出している。反対派住民もていねいに描かれていて、好印象。原作本が読みたくなって図書館を探してみたが、1956年の本はさすがになかった・・・。これはちょっと残念。