日曜美術館 安宅英一 狂気と礼節のコレクター

日曜美術館」 「安宅英一 狂気と礼節のコレクター」、NHK、2011.5.29

NHK日曜美術館でかかっていたプログラム。大阪市立東洋陶磁美術館のコレクションはもとは安宅コレクションなので、そのコレクションが作られるまでの過程を追ったおはなし。

ゲストは美術評論家の林屋晴三。安宅英一のコレクションは、中国では唐代から明代まで。朝鮮では李朝。清代のやきものにはあまり興味がなかったらしい。オークションで落札者から落札価格の倍の値段を払って買ったとか、景気のいい話である。NHKの昔のドラマ「ザ・商社」は、安宅産業がモデルなのでそのビデオもちょっと映っている。

安宅コレクションの収集を安宅英一の命令で実際に行った人の回顧録が出版されたので、(伊藤郁太郎『美の猟犬 安宅コレクション異聞』日本経済新聞社、2007)それも参考にされている。やきものを買う金の工面を会社にさせようとするが、それを断られると、伊藤郁太郎に勝手に借りてこいとか、むちゃくちゃなことをやっている。

安宅英一は、美術にも音楽にも造詣の深い人だったので、中村紘子といっしょに撮影した写真や、中村紘子自身の回想も出てくる。

結局安宅産業は倒産してしまい、コレクションだけは国と財界の配慮で大阪市の手にわたるのだが、美術館を訪れた安宅英一は気落ちされているでしょうと言われて、「どうして?だってコレクションは誰が持っていても同じでしょ」と答えた、というオチがついている。

確かにこれだけの収集をしたのだから、美術の世界では安宅英一がエライ人になっているのはわかる。しかし、彼は自分の金ではなくて会社の金で美術品を集めていたのだし、むちゃな経営で会社も潰してしまったのだから、あまり持ち上げるのはどうかと思う。とはいえ、ゲストが言っていたが、審美眼と金の事情を両方満たすような人はもう現れないからこのコレクションは安宅英一かぎりだろうということだ。