国盗り物語 総集編 前編

国盗り物語」総集編 前編、平幹二郎高橋英樹ほか出演、NHK大河ドラマ、1973

最近、時代劇専門チャンネルで、大河ドラマの総集編でビデオ化されているものを流していて、これもその一本。もっと前には「源義経」とか、「樅ノ木は残った」とかもやっていたのだが、そちらにはあまりそそられないので、DVDに落としてほっておいた。しかしこれはどうしても見たくなったので見た。うっすらと記憶にある大河ドラマのいちばん古いものがこの作品だから。

平幹二郎斎藤道三がなんといってもカッコイイ。というか、斎藤道三は「国盗り物語」以外のイメージをもっていないので、このドラマでの平幹二郎で造型が固まってしまったのだ(小説を読んだのはだいぶ後のこと)。で、斎藤道三が活躍するこの前編がおもしろすぎる。

高橋英樹織田信長をやっていて、これとの対比がはっきりしているのだが、平幹二郎は道三の若いときから、晩年までどの年齢でもきちんと演じきっていてうますぎる。「樅ノ木は残った」をちょっと見たところではかなり重い役をやっていたので、道三のうさんくさそうなところをうまくやっているのがさすが。このドラマの時点で平幹二郎は40歳。役者として、ある程度出来上がっている年齢だから何でもできるのだろうが、青年でもぜんぜん違和感がない。それに比べると、斎藤道三のまわりの女性役は、池内淳子三田佳子も、かなりの年にしか見えない。これはメイクのせいだけではないような気がする。

しかし、原作と比べても斎藤道三の退場が早い。ドラマ全体でも第18回で道三は死んでしまうが、この前編100分の中でも75分くらいのところで死んでしまう。信長が上洛したところで前編はおしまい。だから実質的にはこのドラマの主役は高橋英樹である。何しろいま見ている桃太郎侍の初期に比べても3年若いので、ほんとに若者にしか見えない。平幹二郎の夢を受け継ぐのが、高橋英樹と、明智光秀役の近藤正臣(これもうまい)ということになっているので、芝居としてはこれでいいのだが。あと、羽柴秀吉役が火野正平で、これも当たりだ。昔の役者は若い人でも下手じゃないのがエライ。

あと、個人的に印象に残るのは土岐頼芸役の金田龍之介。この人、バカ殿役をよく振られているが、ほんとうにバカにしか見えないところがエライ。これと近い時期に「子連れ狼」の阿部頼母を演じているのが思い出深い。この人が去年まで生きていたのも驚く。

脚本=大野靖子、音楽=林光の黄金コンビなので、台本と音楽は文句なし。テーマ音楽は全部の大河ドラマの中でもこれが一番好き。