森村泰昌:なにものかへのレクイエム

森村泰昌:なにものかへのレクイエム―戦場の頂上の芸術」、広島市現代美術館

昨日まで、現代美術館でかかっていた展覧会がこれ。けっきょく最終日になってからいくはめになってしまった。こういうパターンは去年反省したはずだったのだが。

まあ、いつものとおり、森村泰昌が、いろんな人に扮して写真に写っているというものなのだが、いちばんおもしろかったのは、展覧会の最初のところにかかっていた、三島由紀夫が自決前に演説をしているところの写真。なんだかやたらうるさい叫び声が聞こえるので聞き耳をたてていると、もうちょっと奥に入ったところで、森村泰昌が、三島の演説をマネしている映像が流れているのである。

この演説が傑作で、「日本」といっているべきところを「芸術」と言い換えており、内容的には「芸術を救え」と訴える演説になっている。この演説が非常にはまっており、「静聴、静聴せい!」「男一匹が、命を賭けて訴えているんだぞ」といった合いの手のところも、本物そっくり、正確に再現されている。元ネタを知っている人はこの時点で「やられた」と感じざるを得ない。

笑えるだけでなく、芸術家としての叫びとも聴けるし、自分自身は西洋芸術のパロディーをやっている森村自身への言葉とも聴けるし、森村の演説にまったく耳を傾けない(実際に、演説を無視して公園をさんぽしている人たちの映像が映っている)一般大衆への訴えとしても聴ける。三島にガンガンヤジを飛ばしていた自衛隊員の姿も思い出される。何重にも重なったしくみになっていて、聴いていて思わず感動してしまった。この映像が、大して客もいない現代美術館の館内でガンガン流れているところは、それ自体がブラックジョーク。静聴せい!って、静聴どころか人がいないよ!映像では、三島由紀夫のコスプレで森村が、いかにも市ヶ谷の自衛隊の建物っぽいところで(どこだろう?)叫んでいるのだが、この映像を三島由紀夫に見せたいわ。三島由紀夫賞の授賞式で流してもいいかもしれない。

たまたま奇特な方がいて、この演説の内容がブログに採録されていた。必見である。
http://blogs.yahoo.co.jp/shishi5235/31810443.html

この日は、最終日で先着100人に森村作品満載のジーンズファクトリー特製カレンダーがもらえることになっていたのだが、遅くに行ったので当然なくなっていた。ざんねん。

どうでもいいが、この日、白神社NHKの前の、54号線と100メートル道路の交差点が大渋滞になっていたので、なに?と思ったら、パトカーと白バイがうんかのように集まっていて驚いた。後でニュースを見たら、中学生が車を盗んで暴走したあげくに、他の車とパトカーにぶつけて捕まったという話。世も末・・・といいたいところだが、森村泰昌展にふさわしいお祭り騒ぎとも言える。広島って、ほんとにとんでもない町。