越路吹雪物語 春風亭小朝

越路吹雪物語」、春風亭小朝

時代劇専門チャンネルでやっていた落語会の演目。もちろん新作。番組のタイトルは「春風亭小朝 特選落語会」。他の出演者は、柳家花緑桂春蝶林家木久蔵。小朝以外は二世の噺家ばかりだが、林家木久蔵はつまらない。桂春蝶はおもしろい。花緑はまあまあか。

とはいえ、この三人は小朝のための前菜。小朝はとにかく圧倒的である。枕のネタのひとつひとつでまず爆笑をとってから、越路吹雪の噺。このおはなしはもとは舞台の題名だから、当然舞台の内容を踏まえていると思うが、わたしは舞台は見ていないのでそこはわからない。

越路吹雪のことは、そんなによく知らない(そもそもシャンソンそんなに聞いてない)ので、このはなしで勉強させてもらったようなものだが、天才的な芸術家は死ぬ時までこういうものですか・・・という噺。噺自体はまじめできざなエピソードだが、噺の中身がちゃんと耳を引きつける。ここは噺の組み立ても話術もほんとうにしっかりできていないと知らない人をひきつけることはできないから、さすがは小朝のわざである。

では笑うところはといえば、噺が越路吹雪と関係なくあっちこっちに飛んで、この関係ないエピソードのひとつひとつがおもしろい。浮気のベッドシーンを語っても、ちゃんと品があってかっこいいところがさすが。噺をいろいろ飛ばしては、越路吹雪のことに戻してくるのだが、このタイミングの取り方や緩急のつけ方が達人の自在な境地という感じ。

最後は、インストゥルメンタルで「愛の賛歌」がかかっているところで、越路吹雪の臨終とその後を語ってちゃんと締めた。大家の話芸はすごいわ。昔、小朝が「甲山町」というとんでもない田舎に来て、落語会をやったときに本当に感動したことを思い出す。小朝は録音、録画をあまり残さないので、だいたい高座に行くしかないのである。この番組は非常にラッキー。ちなみに放送は11月3日。とにかく録画しておいてよかった。