連続人形活劇 新・三銃士

「連続人形活劇 新・三銃士」、池松壮亮山寺宏一戸田恵子ほか出演、NHK、2009-2010

NHK教育で毎週金曜日にやっていたこの人形劇、やっと終わった。

まあ40回よくがまんして見たものだと自分でも思う。見終わってみると、ほんとうに頭にくることがあまりにも多く、見続けるのはかなり苦痛だった。

いや、人形劇としての出来がそんなに悪いわけではない。声優の演技はどれも上手かったし、人形の操演もきちんとできていた。人形は、皮膚の部分にわざと木目を出すつくりがちょっと気に入らなかったのだが、そのことはそれほど問題ではない。

悪いのは全部三谷幸喜の脚本。これは最悪である。見ている人にはけっこうおもしろく見ていた人も多かったらしいが、わたしには全く受け入れられない。なぜならいちおう原作を読んでいるからである。別に細かいところで原作に忠実にしなければいけないとか、そういうことを言っているわけではない。今までのNHKの人形劇でもかなり原作の改変はあった(「三国志」とかはやりすぎだと思うが)。

それにしてもこの「新・三銃士」の脚色はあまりにもひどすぎる。何がいけないかというと、変えてはいけないような物語の柱の部分をいじりすぎている。原作はデュマ=ペールが19世紀に書いているわけなので、勧善懲悪、少年剣士の成長と出世、愛国心みたいなものがいろいろ入っている。ここに現代日本のぬるい価値観を持ち込みすぎ。見せ場のラ・ロシェル攻防戦で、いきなりダルタニアンと国王が戦争反対みたいなことを言い出すとか、悪の権化で結局滅亡するミレディーがアトスの妻で最後は命が助かっていることとか、枢機卿が平板な悪者にされているところとか、原作を読んだものにとってはガマンできないことが多すぎ。

思い出すのは、1970年代くらいまでの特撮ものが善悪のはっきりした構成になっていた(たまにそれをいじって、善悪関係を複雑にしていたこともあったが)のに、最近作られている特撮ものでは善悪関係がよくわからなくなり、結果、話の筋がちゃんと成立していない、何が言いたいのかわからないような話が多くなってきたこと。

三谷の脚本でも、英雄物語としての原作の筋を曲げようとして、無理やり反戦主義を持ち込んだり、最終的に主役が誰も死なない展開になっていたり、今の価値観に原作を押し込めようとして変な操作をやりすぎている。原作をレイプされたようで、非常に残念だし悲しい。やるのだったら、完全に三谷幸喜のオリジナル脚本でやってほしい(もちろんそういうものは見ないが)。デュマ=ペールは泉下で嘆きますよ、ほんとに。