彷徨える艦隊4 巡航戦艦ヴァリアント

ジャック・キャンベル(月岡小穂訳)『彷徨える艦隊4 巡航戦艦ヴァリアント』、ハヤカワ文庫SF、2009

前巻、危ういところで壊滅を免れたアライアンス艦隊。ギアリーは、イクシオン星系からもとのラコタ星系に往復ジャンプし、時間を稼ぎながらシンディック艦隊を襲う作戦に出るが、これがアタリ。シンディックは簡単には戻ってこない。時間を稼いで物資を補充し、戻ってきたシンディック艦隊は、ボロボロの損傷艦に時限装置をしかけておいて、近づいてきたところで吹っ飛ばす。あいかわらず敵艦隊は調子よく壊滅・・・。

これで終わっても困るので、いろいろなアイテムが。まずあいかわらずのリオーネとデシャーニのからんだ三角関係。ギアリーの心はいつのまにか、デシャーニの方へ・・・。ちょっと調子よすぎ!と思ったが、さすがにギアリーもデシャーニと関係を持つことはしない様子。でも、この分では故郷に帰ったら、絶対デシャーニと暮らすことになりそうな感じだが・・・。

そんなことより、艦隊内部での破壊工作がはっきりしてきた。ドーントレスにウィルスを仕掛けて、ジャンプ中に消し去ろうとする陰謀が発覚。さらに真相を知っていそうな、反ギアリー派の士官はシャトルごと消されてしまう。

前から不思議なのだが、このシリーズには艦隊司令長官を補佐する参謀組織というものがない。破壊工作を伝える情報部のアイガー大尉も、ドーントレスの情報将校で、艦隊司令部の将校ではない。ある程度のことはコンピュータにさせられても、何百隻の宇宙艦を遠い星系まで引き連れていく司令長官が参謀部を持ってないのはおかしくないか?まさか参謀達が全員提督に同行して和平交渉でシンディックに闇討ちされたとも思えないし・・・。

おかげで、ギアリーは一人で全部の判断をしなければならない。たまに助言をくれるのはリオーネくらいだが、リオーネは軍人ではないので作戦のことはわからない。艦長たちは、あまりあてにならない。ギアリーはスーパースターだが、人事から補給から作戦から、みな一人でやっていては頭が爆発すると思うが・・・。

で、終わりの方、シンディック政府に見捨てられた星系の住民の救助信号を受信して、ギアリーは住民を救助して近くの星系まで運んでやることにする。戦争法を厳密に守って、非戦闘員を無用に殺害しないギアリーの態度はわかるとして、ここまでやるのはちょっと行き過ぎでは?そもそも艦隊に大量の民間人を運ぶ余裕があるのか?途中でシンディックに攻撃されたら?

いろいろ疑問はあったのだが、ギアリーの台詞「情けは人のためならず」が、なかなか効いている。ちょっと泣かせるエピソードで好き。

訳者あとがきによれば、とりあえず6巻でシリーズはいったん終了するが、設定を同じにしてまた書き続けることもありだという。まあそうだろう。シンディックの始末、異星人との対峙、あと2巻で終わるとはとうていおもえない。さしあたり5巻をなんとか読まなければ。