スペシャルドラマ 坂の上の雲

スペシャルドラマ 坂の上の雲」、本木雅弘阿部寛香川照之ほか出演、NHK、2009.12

放送は去年の12月にあったのだが、録画してあったものを見終えたのはやっと最近になってから。思うのだが、45分番組を10回だったら、もうちょっと気軽に見られたかもしれない。90分番組を5回というのは、時間は同じでも敷居がだいぶ高いのである。短い映画1本分なのだから、あたりまえだが。

話はだいたいよくできている。やはり役者がうまいし(モックンと香川照之は思ったとおりうまいが、阿部寛は思っていたよりさらに出来がいい)、キャスティングが豪華。現時点で集められる年長の役者で主だった人はほとんど集めたという感じ。東郷平八郎役の渡哲也とか、その役には年を食いすぎだろうとも思うが、威厳は侵しがたい。

それになんといってもお金がかかっている。黄海海戦の場面や、満州での日清両軍の戦いの場面を見れば一目瞭然である。大河ドラマのようになるべくお金をかけずにごまかすようなこともしていない。軍服や馬、軍艦のセット、ロシアでの舞踏会のセットなど、映画をつくれるくらいのお金を使っているだろう。特に黄海海戦の場面はとてもよく撮れている。鋼鉄の軍艦が大砲を撃ち合うということがどういうことか、弾が当たった方はどうなるのか、目に見えるようにわからせてくれる。

気に入らないのは、正岡子規日清戦争の従軍記者として取材に出たときの清国人とのエピソード。原作では「正岡子規はほとんど何もしないで終わった」で片付けられていた場面だが、わざわざ日本を悪者にするように描いている。まあ、2009年にこのドラマを放送するのだから、このくらいの「言い訳ができる場面」を入れておかないと、いろいろと都合が悪いのだろうが・・・。

全般的に、最近の大河ドラマの悲惨な状況(今の「龍馬伝」はそこそこおもしろく見ているが)を打開する意欲作。NHKもやればできるじゃないの!

しかし心配なのは、このドラマ、毎年12月にだけ、3年がかりで放送する予定になっているのである。2009年に5回、2010年に4回、2011年に4回、合計13回ということなのだが、1年前のドラマの内容をふつう覚えているか?まして3年目には1年目の内容は記憶から消し飛んでいるだろう。たぶん、前年、前々年の内容をダイジェストする特集回を放送するのだろうが、視聴者はついてこられるのだろうか?まあわたしは根性で見ると思うが・・・。NHKも思い切ったことをする度胸があることは認めるが、結果が是と出ればいいのだけれど。