未成年 続・キューポラのある街

「未成年 続・キューポラのある街」、吉永小百合浜田光夫宮口精二ほか出演、野村孝監督、日活、1965

キューポラのある街」を初めて見たのは小学生か、中学生のころ。当時は嵐のように感動していた。もう10回近くは見たのではないか。しかしこの映画を見るのはやっといい年をした今になってから。まあ、見たのが今でよかったともいえる。

前作から3年経ったことになっていて、ジュン(吉永小百合)は工場で組み立て工をしながら、定時制に通っている。で、友だちが妊娠したとか、克己(浜田光夫)が事業をおこして挫折したとか、北朝鮮に渡った友だちのヨシエの母親がまだ日本に残っているのを北朝鮮に送り出すとか、いろいろなことが起こるというお話。

北朝鮮帰国事業関係の話は、前作の時点でシャレになっていなかった。もちろん、前作を最初に見たときは北朝鮮がどういうところかなど知らなかったので、素直によかったねと思っていたが、本作はそれどころじゃない。

ヨシエの母親は日本人で、家族と別れて一人で働くのは寂しいものの、北朝鮮に渡りたくはないのである。それをジュンは「わたしだったら、朝鮮にいくわ」と、無理やり送り出してしまうのだ。しかもヨシエの母親は北朝鮮には一度行ったら帰ってこられないことを知っていて行くのを嫌がっているのである。ジュンはほとんど朝鮮総連工作員みたいなもの。さらには、朝鮮学校の生徒で、ヨシエの母親を北朝鮮に送り出そうとする新キャラも登場。こっちは、本物の工作員である。なにしろジュンに「あなたはなぜ朝鮮に帰らないの?」と聞かれて、「ぼくには日本にいる朝鮮の子供達に正しい民族教育をする責任があるんだ」と答えてしまうような御仁である。ひえー。

まあ、この話を抜きにしても、他人の話を聞いていないジュンの性格と行動は前作と基本的に同じ。それでも前作は、まだ希望があるような話になっていたし、ジュンの成長物語という側面があった。しかし高校3年生になって、やってることがまるで変わらないというのはどうか。

大学進学のために貯めていたお金を克己に渡してしまい、大学進学はおろか、定時制もやめてしまう(これは会社で事務職になれるコースをあきらめるということも意味している)ジュンはまあかわいそうといえばかわいそう。しかし、こういう視野の狭い人(飲んだくれの父親=今作では宮口精二、はジュンと正反対のキャラクターなのだが、自分の固定観念を盲信するという点では二人はさして変わらない)は、せめて高校くらいはちゃんと出て、社会のことを考えた方がいいと思う。いや、ほんとに。

なんだか全篇が、「正しい共産主義者」になるための思想教育映画という感じ。前作にもそのような傾向はあったが、本作ではほとんどそれしかなくなってしまっている。前作が今でも名作として扱われているのに比べて、本作がほとんど無視されているのも納得。

というか、吉永小百合って、あれだけ映画に出ているにもかかわらず、全然道を踏み外したキャラをやらない人だ。だから今でも根強いファンがついているのはわかるが、正直、女優としてはどうかと思う。