生命保険のウラ側

後田亨『生命保険のウラ側』、朝日新書、2010

生命保険というのは、典型的な売り手と買い手の「情報の非対称性」に乗っかった典型的な商品だということがよくわかる本。

著者は日本生命で営業を10年つとめ、その後複数の保険会社の代理人を兼営していて、業界の内部事情には精通している。この本を読んで思い出したのが、朝日新聞のサイト、asahi.comで、テレビで宣伝していた「年齢にかかわらず払い込み金が変わらない」「入院時には100万円」の保険が、実は事故によるけがの際にしかきかない「損害保険」なのに、それを病気の際の入院にも適用される生命保険と誤解させるような宣伝をしていると指摘していた人が著者で、それで覚えていたのだった。

ほかにもいろんな指摘が出てくるのだが、要するに保険(生命保険)のほとんどは、客が商品の内容を知らずに、リスクに対して過大な保障(つまり過大な負担)を求めているような商品ばかりで、実際の客の利益はほとんどはかられていないという話。

著者は、職場で団体加入する掛け捨ての「団体定期保険」1本で充分、保険料は月収の1%程度が妥当だと断言するが、この本を読めばその主張にも納得。特に入院保険ガン保険の商品のほとんどは、リスクに対して見合う負担になっていない。

このような買い手の不安感や、あるいは利益への欲目につけこんで、内容のよくわからない商品を買わせるというところは、証券会社なんかにも共通しているところがあると思うが、そこが情報の非対称性の効果というもので、買おうとしている商品が高額であって、しかも商品の内容をよく知らないのに手を出してしまうということは実際にあるのだ。しかも保険の場合、多額の費用は「機会損失」という形になっているので、買い手にはそのコストが理解されていないこともポイントだと思う。

銀行預金みたいなわかりやすいものを除けば、投資信託にせよ、生命保険にせよ、金融商品にはこの手の商品がやたら多い。なぜこういうことの基礎知識の啓蒙があまりなされていないのかもふしぎな話だと思う。