芸術劇場 勧進帳 極付幡随長兵衛

勧進帳」、富十郎吉右衛門、鷹之資ほか
「極付幡随長兵衛」、吉右衛門仁左衛門芝翫ほか、NHK芸術劇場、2010.1.29

今週の「芸術劇場」は歌舞伎。もともとあんまり見るつもりはなかったのだが、見ているとついついテレビが消せなくなって結局見てしまうことに。うーん。

勧進帳」は、富十郎の弁慶と吉右衛門の富樫。富十郎は何をやってもいちいち決まっているし、吉右衛門の富樫がまたかっこいい。大成した役者の芸はこういうものだという芝居。

で、この舞台、10歳の鷹之資が義経をつとめている。いくら長男だからってそれはどうなの?と思うが、もともと「安宅」の義経は子役が舞うことになっているそうで、そちらの決まり事にならえばこれでいいことになるらしい。まあ型だからこれでいいんです、と言われればそれまでですが。

「幡随長兵衛」(芝居の題名では「幡随院長兵衛」とはならないとのこと)は、非常にわかりやすく、かつかっこいい。吉右衛門による幡随院長兵衛の長台詞がとにかくいい。妻役の芝翫との微妙なところの芝居、やられるのをわかっていて、水野十郎左衛門(仁左衛門)の屋敷に出向くところの表情、屋敷の中での吉右衛門仁左衛門のやりとり、台詞回しも呼吸もいい。最後、幡随院長兵衛は風呂に入れさせられてだまし討ち、それも後ろから斬られて死ぬ。死して名を残す、これがかっこいいですねー。

勧進帳も幡随院長兵衛も、客を黙って泣かせる無言の力が詰まっている。長く演じられる芝居の力だと思う。