東京観音

荒木経惟杉浦日向子『東京観音』、筑摩書房、1998

荒木経惟杉浦日向子が東京の観音様(だけではなく、いろんな仏様も入っているが)を訪ね歩いた写真集。アラーキーの写真に、杉浦日向子が文章をつけ、二人のトークっぽい文章もそこかしこにはさんである。

最初は吉原の浄閑寺から。死んだ遊女の骨をまつる塔がある「投げ込み寺」。寺だから当然とはいえ、死を身近に感じさせる強烈なところ。とはいえ、暗さはうかがえない。死を遠いものに考えないこの二人だからこそできた作品だろう。

最後は豪徳寺の招き猫がいっぱいのお堂で、杉浦日向子が招き猫のポーズで猫たちと写真におさまっているところで終わり。笑顔がかわいい。この写真集から7年後に鬼籍に入ることになるのだが、亡くなってからもう4年も経ったと思うと感慨深い。

街角の小さな仏様をていねいに拾っている本で、巻末には撮影地、住所、ゆかりのエピソードが載っている。とりあえず、機会をみつけて浄閑寺には行ってみようと思う。