相羽奈美の犬 1

松田洋子『相羽奈美の犬』1、ぶんか社、2009

松田洋子の新刊。8月に出たので、直後に買っていればプレゼントに応募できたのに・・・。がっかり。

しかしこれは松田洋子の作品の中でも傑作である。名門高校の美少女、相羽奈美を追い回すヒッキーのストーカーが車にはねられて死んでしまうところが、なんの因果か犬に変身して、相羽奈美のまわりにたかる変な人たちを観察する生活を送るようになる、という話。この変身犬、かみついた人間を犬にしてしまう特殊能力があり(なぜか最初にかみついた時だけは、この能力が発現していないのだが)、これで話が二重におもしろくなっている。

作風としては、「赤い文化住宅の初子」の悲惨路線と、「人生カチカチ山」などのシニカル路線が交じり合いながら新境地を開拓している感じ。とにかく相羽奈美は孤高の美少女で、回りの人間は全員気持ち悪いのか、嫌な奴かどっちか。主人公を犬にしている視点が成功していると思う。2巻の展開が非常に楽しみなのだが、出るのに当分かかるのかなあ。併録されている、「おはようございます天田先生」は悪意と悲惨でドロドロの作品。