ゼロ発信

赤瀬川原平『ゼロ発信』、中央公論新社、2000

新聞小説を本にしたものだが、これはどう読んでも小説ではなくエッセイである。というか著者の日記だ。もちろん著者は、「これは自分の日常の出来事から題材を借用しているが、あくまでも架空の話ということで書いているのだ」ということで、小説といっているのだろうが。

あとがきに「ほとんど現実の日録といえば日録なんだけど、そこにちらっと小説が見えてくる」とあるので、そういう趣旨らしい。

著者のカメラ趣味はよくわからないので、それはほとんど飛ばしたが、犬のニナと猫のミヨの部分には心をわしづかみにされた。犬猫を可愛がるというのとはちょっと違っているが、ただ離れて観察しているというのでもない、この微妙な距離がいいのである。著者の文章はみなこの微妙な距離のとりかたがいい位置に決まっていて、何を読んでも嫌な感じがしない。