資本主義はなぜ自壊したのか

中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』、集英社、2008

いろいろなことが言われている本なので読んでみたが驚いた。中谷巌はほとんど経済学者じゃなくなってる・・・。まず何を結論にしたいのか、よくわからない。「小さな政府が必要」といいながら、実際の政策提言は大きな政府を支持するものばかり。グローバル経済が問題だといいながら、日本が単独でグローバル経済を離脱できると考えているわけではない。頭の整理がよくできていないのではないか。さらにキューバブータンを持ち上げている章にいたっては失笑もの。中谷巌はそういう国に住みたいと本気で考えているのだろうか。

説明も、著者がいう「市場原理主義」を攻撃することに役立つ材料ならなんでもあり、というもの。歴史的説明は粗雑、あげくに日本文化特殊論。これがあの中谷巌の書いた本ですか。『入門マクロ経済学』で、かつて経済学を勉強した身としては、ほとんど悲しくなってくる。そのへんのどうでもいい学者ならともかく・・・。

人間、考え方が変わるということはあると思うが、仮にもプロが、経済学の方法論をこんなにあっさり捨てることができるということが信じられない。根本的に行き先を間違えていると思う。