元禄太平記

元禄太平記」第18回「刃傷松の廊下」、石坂浩二江守徹片岡孝夫ほか出演、NHK、1975

大河ドラマアーカイブスの放送は、これと「新平家物語」の間、「国盗り物語」と「勝海舟」が飛んでいる。両方録画がないのかと思ったら、「勝海舟」は3回分本編の録画があるのに権利関係で放送できないのだという。「勝海舟」は本放送時ろくに見ていなかったので(松方弘樹があんまり好きじゃなかった)、特に見たかったのに。ざんねん。

この「元禄太平記」だが、柳沢吉保が主役の忠臣蔵というもの。まあ大河ドラマ忠臣蔵をやるのは2回目だから(今までに全部で4シリーズも忠臣蔵をやっているのだ)、ちょっとずつ趣向を変えないといけないのだろう。しかしこの回は、ふつーの忠臣蔵である。まあ松の廊下の回だし、そんなに変なことはできないだろう。画質はあまりよくない(遠くに映っているものはボケている)が、いちおうカラーだし、VHS3倍速程度のものだから、よしとしなければ。

柳沢吉保(この回では保明)は石坂浩二。これがかっこいい。上様(芦田伸介)御前の評議では、内匠頭をバシバシ断罪。口舌にリズムと威厳があって、冒しがたい。やはり柳沢はこれくらいやってくれないと。内匠頭は片岡孝夫仁左衛門)。「上野、覚えたか!」のところは気合いが入っていて、これもよし。いつも思うのだが、なぜ内匠頭は上野介に切りつけるときに脇差を胴体に突き立てないのか。いまどき、包丁やナイフを使う殺人犯だって、そのくらいのことはわかっているのに。どうでもいいが、傷は二カ所といっているのに、芝居では内匠頭は三回切りつけている。

上野介は小沢栄太郎で、これがまた非常によい。いかにも悪役然とした上野介。情けなく逃げるところも、病床を見舞う柳沢にへいこらするところも、絵に描いたような上野介。腹に一物ある役をやらせたら、小沢栄太郎以上の人はいなかったし、この位置にいる人が今でもいないのは残念のかぎり。「新平家物語」では信西だったからこれもぴったりだった。

赤穂藩の人々は、江守徹以下、この回ではあんまり出てこない。ちょっと吉田忠左衛門中村伸郎)が出てきて内蔵助と談笑しているくらい。松坂慶子は内匠頭の室だが、静かに座っているだけ。最後は江戸から刃傷沙汰を知らせる早駕籠が赤穂に着いて内蔵助に報告するところで終わり。江守徹はやややせているが、やはり貫禄はさすが。「元禄太平記」は家に全編録画しているそうなので、さっさとNHKに売ってほしい。