間宮兄弟

江國香織間宮兄弟』、小学館、2004

前に映画は見たのだが、こちらは小説の方。読んでみて、登場人物のえぐい心の中は、映画では相当程度削られてファンタジーみたいに作ってあることがわかった。おおまかには原作に沿っているのだが、ちょっとマイルドにしている感じ。それに間宮兄弟のオタクっぽい生活が非常にこぎれいになっているので、これが女性にウケない理由が得心しないのである。

その点、本の方は、もうちょっと踏み込んでいる感じはある。間宮兄弟と周囲の女性たちの線が交わらないところも、比較的ちゃんと書かれている。しかし、このお話がちゃんと切り込んでいないのは、独身男性にとっての性欲発散問題。弟の徹信はソープランドに行っていると書かれているが、年に3回やそこらソープランドにいくだけでなんとかなるわけないでしょ。兄はそれも嫌がっているように書かれているし、ビデオ屋ではアダルトビデオも借りないのである。まあ江國香織の小説の登場人物がTENGAとか使っていたら、そりゃ驚くけれども、恋人をつくろうという願望の前に、そもそも切実な性欲問題があるでしょう。そういうところでは、この話もファンタジーの世界の話である。

それはそういう話が書きたかったんだと言われれば、別にいいんですけどね。