どろどろどろん

「どろどろどろん 異界をめぐるアジアの現代美術」、広島市現代美術館

ここは開館20周年記念だそうで、5月3日から5日まで無料開館。しかしそのわりには人はあんまりいない。まあ、ここはいつもどおり静かなところでいる方が、お似合いである。別にお休みでタダだから現代美術を見に行こうという人もそんなにいないだろうし。

表題は「異界をめぐるアジアの現代美術」ということになっているが、国立歴史民俗博物館から借りてきた民俗資料もいろいろ並べられている。で、昔の異界イメージと現代美術を見比べて思うのだが、幽霊だの化け物だのといったことを本気で信じていた昔の時代はともかくとして、いまどき「異界」といっても、あまり現実的な怖さがない。

展覧会のパンフレットには、「不安や未知の領域を表すことによって現代を投影する、日本をはじめとするアジアの現代美術」ということになっているのだが、展示物のほとんどが、「それって、昔の妖怪のパロディでしょ」というような感じのもので、あまり「怖さ」を感じない。

その中では、中原浩大「ツバメ」2006(これはツバメをひたすら写した記録写真)が、なんとなく怖さをかもしだしていた。空にツバメが群れているところは(とくに日暮れ時は)、どうにも気持ち悪い。あとは、風間サチコ「日本列島改造人間」2002ほかの木版画。これは風刺なので、コワイのではなく、おもしろいだけだが。

館内のエレベータで、現、現代美術館長、原田康夫がいきなり降りてきて驚いた。この前けっこう高位の勲章をもらっていたせいか?ご機嫌の体。おまえが一番のリアル妖怪だろうが!と心の中で突っ込みを入れてしまった。

帰りには、いきなり雨が降ってきて、しかもほとんど驟雨という激しい雨で途方に暮れた。そうしたら、間のいいことに今日だけ、午後7時まで開館が延長。ソファーで美術雑誌を眺めていたら眠くなってぐうぐう寝てしまい、起きてみたら閉館時間。ちょうど小降りになっていたので、速攻で帰った。ああよかった。