はじめての<<指環>>

山本一太『はじめての<<指環>> ワーグナー<<ニーベルングの指環>>聴破への早道』、音楽之友社、2005

山本一太といえば政治家しか知らなかったが、音楽評論家の方もいるんですね。で、これはワーグナーの「ニーベルングの指環」をこれから聴きとおしてみようかという人への入門書。ワーグナーは、管弦楽編曲版しか聞いたことがないとか、ヴェルディプッチーニは好きだがワーグナーは長いのでちょっと、というあたりの人がターゲット。しかし、きちんと書けている本で、指環をある程度聴いているファンにもじゅうぶん楽しめる。

この本のポイントは、それぞれのライトモティーフとその意味を、物語の展開の中でていねいに説明しているところ。それも、音楽に詳しくない人が対象だから、楽譜は一切抜きである。だから、基本的にはCDかDVDを聴きながら読むのが一番よいのだろう。もちろん、だいたいの音楽の流れを知っていれば、読んでいるだけでけっこうわかる。楽譜を普通に読める人はCDのライナーノートだけでもいいのだろうが、そうでない人は、ショルティの全曲盤についているライトモティーフ解説CDがどうしてもいると思っていた。この本のおかげで、CDかDVD(最近、バレンボイム/バイロイトの91年、92年録音のDVDが、小学館から「魅惑のオペラ」シリーズのDVD BOOKとしてけっこう安く出ていることを知った)が手元にあれば、それを聴きながらこの本をよめば、音楽的な理解がかなり深まるだろう。もちろん、音源なしで、ストーリーを知るためだけに読むことも可。

巻末に指環の主要なCD、DVDのおすすめ録音が紹介されていて、それも参考になる。やっぱりショルティ盤は買わなくちゃ!