霜夜狸

「霜夜狸」、大矢市次郎加藤武出演、宇野信夫作、香西久演出、NHKラジオドラマアーカイブス、1966

NHKラジオドラマアーカイブスでの1966年録音作品の放送。大矢市次郎が息子を亡くした親父で、加藤武は息子そっくりに化けた狸という設定。加藤武はふつうだが、大矢市次郎が非常に上手い。この人はぜんぜん知らなかったが、新派の役者で1894年生まれ、1972年没という人。

放送の後で、加藤武へのインタビューがあったが(現在80歳だという)、このドラマ放送時には37歳だったという話。加藤武は、大矢市次郎にかねてあこがれていたと語っている。まあ親子ほども歳が離れているわけだし、このくらい上手い役者だったら、それも納得である。

加藤武も芸歴の長い人だが、このドラマの時期での映画出演作というと、「白い巨塔」(大映)、「けんかえれじい」(日活)、「日本のいちばん長い日」(東宝)あたりになるか。全部脇役でも印象に残っているから、若い頃から上手だったし、役もよかったということだろう。自分の記憶に残っているところでは、1962年製作の「キューポラのある街」(日活)、1961年製作「用心棒」(東宝)あたりが一番古いところか。これだけの期間、現役で活動できるのもたいへんなことだ。

しかし、このドラマ、幕切れが「え?これでおしまい?」というくらい唐突である。本来、もうひとつかふたつエピソードが入ってしかるべきだと思うが・・・。あまりうまい作劇とはいえない。