トスカニーニとの対話

トスカニーニとの対話」、バリー・ジャクソンほか出演、ラリー・ワインスタイン監督、フランス、2008

トスカニーニの生涯を題材にしたドキュメンタリー・ドラマ。1954年の暮れにトスカニーニが家族と炉端で自分の過去を回想するという形式。すでに引退し、亡くなる約1年前ということになる。

内容には往時のフィルムが随所に挟み込まれている。NHKの紹介では、「晩年に孫がひそかに収録していた会話を元にしたやりとりに、 1932年から1957年に実際に収録されたホーム・ムービーやニュース・フッテージ そしてアーカイブ映像、1948年-52年のNBCのコンサートが華を添える。」とあって、実際にトスカニーニが語っていた内容をもとに構成されているようだ。原題は、"Toscanini in his own words"。

とにかくめちゃくちゃ口の悪い人で、軽蔑している音楽家はけちょんけちょんにされている。プッチーニは自分で音を書いてないと言われ、フルトヴェングラーは魂を政治に売り渡したと言われ、ストコフスキーは音楽の敵扱い、カラスは見た目だけで人気を得ていると、さんざんである。フルトヴェングラーストコフスキーはともかく、トスカニーニプッチーニの曲も振っていたのだが・・・。

最後にかかっているのは「ラコッツィ行進曲」。劇中にかかっているほかの曲も含め、出来はすばらしい。まあマエストロは何をやっても許されるということか。

このドラマの後に、トスカニーニの演奏の録画がかかっていたのだが、傑作なのは、ヴェルディ「諸国民の賛歌」をトスカニーニが編曲したという代物。イギリス、フランス、ソ連(インターナショナル)、アメリカの連合各国の国歌に、原曲の歌詞を変えて「イタリア、裏切られしわが祖国」というヴェルディの歌が入っている。珍妙無類。