夕鶴

「夕鶴」、山本安英宇野重吉ほか出演、岡倉士朗演出、NHK、1949

NHKのラジオ第一で月1でやっている、「ラジオドラマ・アーカイブス」でかかっていたもの。「夕鶴」って、そんなに古い芝居だったのかと思って調べてみたら、舞台上演に先立ってラジオドラマになったものだという。ということは、これが実質的な初演である。

わたしは山本安英がこれを演じていた舞台を見たことがないのだが、このドラマでの演技はほとんど神がかってうまい。人間であって人間でないみたい。そして宇野重吉のほうだが、これがまたたいへんなうまさ。よひょうはちょっと頭が足りない男だが、この阿呆らしい間の取り方が絶妙なのだ。山本安英は、つうを舞台で1000回以上やったというし、宇野重吉も舞台で演じているのだが、最初からここまで完成されていたというのはたいへんなことだと思う。

また、この「夕鶴」という芝居自体、非常に役者を選ぶものだと思う。山本と宇野のこのコンビだから、ここまでできているので、下手な役者がやったら、聞いていられないようなことになりそうだ。木下順二は、山本安英の存命中はこの役をプロがやる場合には山本以外に演じさせなかったそうだが、それも納得。この録音は本当の掘り出し物である。