シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ

ベートーヴェン「ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲」、マーラー交響曲第1番 巨人」、マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、ルノー・カプソン(ヴァイオリン)、ゴーティエ・カプソン(チェロ)、グスターボ・ドゥダメル指揮、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ、広島厚生年金会館、2008.12.19

このコンサート、数日前に偶然知って、当日券があったので行くことができた。名前はそれなりに通った楽団だが、まあアマオケだし、そのわりにアルゲリッチも来るから、と軽い気持ちで行ってみたら、そのような軽い考えはいい意味でまったく裏切られた。

三重協奏曲は、アルゲリッチルノー、ゴーティエのカプソン兄弟の三人に隙がない。アルゲリッチが上手いのは当然として、ルノー・カプソンゴーティエ・カプソンの二人がまた非常に上手い。オーケストラとのアンサンブルもばっちり決まっている。いいもの聴かせてもらってありがとう。

しかしほんとうにすごいのはマーラーだった。まず編成に驚く。140人以上いたのではないか。フルート6人、ホルン8人、コントラバスが12人いるのは数えた。舞台からはみ出さんばかりにぎゅうぎゅうに詰めている。そして鳴りがすごい。これは単に編成が大きいからだけではなく、ほんとうによく鳴っているのである。ときにトチっていたところもあったが、そんなものは気にさせないだけの圧倒的な迫力があった。第4楽章は聴いていて涙が出た。客は総立ちである。このオーケストラがアマチュアのユースオーケストラだというのがほとんど信じられない。日本のプロオケのほとんどより上手いのではないか?

特に打楽器、ティンパニは上手かった。ホルン、フルートも決まっている。弱奏から強奏まで自在にやってのける。あなどれない人たちである。

アンコールはなんと3曲あった。バーンスタイン「ウェストサイド物語」のマンボ、ヒナステラエスタンシア」のマランボ。この2曲は見せかたがすごい。楽器を振り回し、ステージで踊りまくり、金管はへんなはちまきをしてるし、最後は楽員がステージから客席に降りてきて、じゃんじゃか弾いていた。これはむちゃくちゃ盛り上がった。ほんとうのショーマンシップを知っている人たちである。北米やヨーロッパのオーケストラでも、ここまで自分も楽しみ、客も盛り上げられる楽団はそうそうないと思う。3曲目はなんと「君が代」だった。日本でのわずかな公演のために練習してくれたのね。ありがとう。

今年はウィーンフィルベルリンフィルを含め、いろんなコンサートに行くことができたが、この演奏が文句なく今年聴いたベスト1である。音楽そのものについても、その見せかたについても、強いインパクトのある演奏会だった。近いうちに必ず日本に来てね!どこで演奏会があっても必ず行きます。