三国志男

三国志男』さくら剛、サンクチュアリパブリッシング、2008

三国志演義関連の史跡の旅行記。著者はこの前、NHKの「BS熱中夜話」で三国志を取り上げた回に出ていた人で、番組の中でも、訪問した場所の写真をいろいろ解説していた。内容は、半分イタイがおもしろい。とにかくひたすら三国志関連の故地を訪ねて、ほとんど半年近く中国をめぐるのだ。表紙裏の扉に著者が回ったコースの略図が出ているのだが、蛇がのたくったような線が三国時代の中国をにゅるにゅる走っている。さすがに南蛮とか西涼には行っていないようだが、これだけ実際に回るのは並大抵のことではない。しかも、ほとんどの史跡は交通の便利なところではなくて、バスで何時間もかかり、降りてからさらに2時間歩く、というような場所ばかりである。

しかもその史跡というのがなんともインチキくさく、パチもんっぽいところばかり。個人的には、阿斗がくるまれたまま地面に投げ出されている石像とか、かなり笑えた。こういうところを半年ひたすら回る(あまり中国語も上手には見えないのに)のは、三国志に対するよほどの愛がなければできないことだ。著者の愛情の対象は、横山光輝吉川英治三国志だというのもまた一興。

この本の写真を見ていると、三国志関連の史跡に建っているモニュメントは、どうも明清時代はおろか、この二十年ばかりのあいだに建てられたようなものがほとんどなのだが、実際どうなのか?例のCCTV三国演義」でブームに乗って建てられたように見えてしかたないのだが・・・。まあ1800年前の、しかも小説はさらにその1000年以上後に書かれた話なのだから、どこに何をつくろうが、細かいことをいってもはじまらないわけですが。