廃市

「廃市」、小林聡美山下規介ほか出演、大林宣彦監督、ピー・エス・シー、ATG、新日本制作、1984

小林聡美は二本目の映画になるが、さすがに「転校生」からはだいぶ成長した感じ。子どもから女になる境目の感じがなつかしい。映画は、死んでいる町「廃市」に生きている人たちと、そこに卒論を書くためにやってきた大学生=山下規介のあいだでゆっくり進む。ロケ地は福岡の柳川で、堀をゆきかう舟、陰影のある町並み、暗い色調の画面。大林映画の定石通り。いちおう、風景や人の服装は現代という設定のようだが、小林聡美の台詞はほとんど明治か大正の人のような感じ。その台詞も死んでいく町のイメージにはよく合っている。

なにしろ暗い映画なので、大林映画の中ではあまり人気はないが、自分としてはけっこう気に入った。人が生きている中で、町がゆっくりと死んでいき、人々もそれを受け入れているというのがよい。まあほんとうに死にかかっている町は、ここに描かれているように美しいものではないと思うが。