反中vs.親中の台湾

『反中vs.親中の台湾』近藤伸二、光文社新書、2008

著者は、毎日新聞で初代の台北支局長をつとめた記者。表題のとおり、中国との関係にも触れているが、主に陳水扁政権以後の台湾の政治情勢全般に触れた本。2008年3月の総統選の結果を踏まえて、民進党と国民党の対立、台湾の歴史、政治構造などについて、予備知識のない読者にもわかるように概説されている。実際、台湾の最近の事情についてのちゃんとした解説書は少ないので、簡単に台湾政治についてひととおりのことを知りたいと思う人にとっては良い本。

他方、なにぶん頁数は少ないので、アメリカとの関係など書いていないこともいろいろある。しかしそれはそれとして、台湾の政治(特に政党制、民族、地域と政党の関係、腐敗問題など)について、短い時間で読める本としては役に立つ。ほんとうは台湾と韓国の比較など、いろいろ知りたいことがあるのだが、それはがまん。文献リストは、もうちょっと幅広く台湾問題に対する案内になるようなものをあげてほしかった。