ラフマニノフ ある愛の調べ

ラフマニノフ ある愛の調べ」、エフゲニー・ツィガノフほか出演、パーヴェル・ルンギン監督、ロシア、2007

ロシア製作のラフマニノフの伝記映画ということで見てみた。ラフマニノフアメリカに渡ってからのコンサートからはじまり、ピアニストとしては成功するが作曲家としては作品が書けない人になってしまうラフマニノフの鬱な毎日を、ロシア時代の生活を織り交ぜながら描くという映画。

とにかくラフマニノフが神経質な人になっていて、名声でも金銭的にも成功し、ちゃんと妻と家族もいるのにぜんぜん幸せそうでない。まあそれはともかく、書けない書けないと年中鬱々としていて、しかも見ている方にはその理由がよくわからない。ラフマニノフが渡米後ほとんど作品を書かなかったのは事実なのだが、ただ悩んでいるところばかり映されても客は困るだけである。最後の救済の場面もあまり説得力が感じられないし。まあ立ち直ってパガニーニの主題による狂詩曲を書けたのだから、めでたしめでたしなのだが。

神経質なラフマニノフを演じているツィガノフの芝居は上手い。それからこの役者、ラフマニノフご本人にとても似ているのである。キャスティングの重要な理由はそこだと確信する。しかし脚本はだるいし、音楽映画というにしてはそれほど音楽が出てくるわけでもない。どうも中途半端な映画。

まったく関係ないが、この前NHKで「名曲探偵アマデウス」という番組の再放送があり、いつもは見ないのだが、取り上げていたのが、ラフマニノフピアノ協奏曲第2番だったので、ついつい見てしまった。そして楽曲解説に中村紘子が出演していて、そこであの恐ろしい、準メルクル指揮、N響との演奏が流れていたのである。曲の解説を中村紘子がやるのは問題ない。しかしあの演奏を「お手本」として出すというのは、NHKのディレクターにはまともな耳がついていないというしかない。著作権使用料の問題?いや、それにしてもあれはなしでしょう。中村紘子先生は楽譜おかまいなしで、ばんばん自分の世界を展開されていた・・・。昨日の呉市文化ホールでの演奏のほうが10倍ましである。

追記 この記事を書き終わってから、アップしたら関連するブログがいくつか表示された。その中には上にあげた、中村紘子準メルクルN響の演奏についてのものがいくつかあったのだが・・・。みんなけっこうホメてるんですが。少なくとも演奏の問題点を指摘した文章はない。みんなあれを聞いておかしいと思わないの?ブログにはテレビの放送を見て書いた人だけじゃなくて、実際に演奏会に足を運んで書いている人もいたんですけど。「少々のミスはあったが」って、少々とかいうレベルじゃないでしょう。一番肝心なところで音がめちゃくちゃなんだから・・・。別のブログには「鳥肌がたった」とある。わたしも鳥肌が立ちました。でも理由はまるっきり違うところにあると思いますが。

わたしはもしかすると自分の耳がおかしいのではないかという気がしてきた。いやそんなはずはないのだけれど。なにか、「裸の王様」のお話を思い出してきた。おそろしい。しかし、誰がなんと言おうがあの演奏はおかしいです。それで狂ってるといわれるのだったら、それでけっこうです。



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