若親分

「若親分」、市川雷蔵ほか出演、池広一夫監督、大映、1965

市川雷蔵主演のヤクザもの「若親分」シリーズ第一作。市川雷蔵とヤクザの親分はどうも簡単に結びつかないのだが、それをなんとかするための設定が「海軍士官出身のヤクザ」というもの。いきなり冒頭で親分だった父親が斬られ、市川雷蔵は跡目を継ぐために海軍を退役する。この辺の経過はやたらあっさりと片付けられる。その後も、父親殺しの犯人がわらじを脱いでいた一家の親分の腕をいきなり切り落とす、のはまあいいとして、悪役佐藤慶といきなり花札勝負、それもイカサマ勝負をプロに見抜かれないようにやってのけるのにはびっくり。海軍士官ということは中学校、兵学校出だろう。いつそんなことを覚えたのか。

まあそんなことは気にするでもなく話は進むのだが、腕を切り落とした親分が実は無実で、黒幕は佐藤慶だったというので二度びっくり。片腕にしておいて、あ、間違えたですむのか?相手もあっさり許しているし。

とにかく若親分は、かっこよくてモテモテである。芸者衆はみな参っているが、若親分は幼なじみの朝丘雪路ひとすじ。で、若親分の方から結婚を申し込むことになっている。このあたり、ヤクザ映画といえども、市川雷蔵の女性ファンを逃すまいとした大映の苦心が感じ取れる。

最後はパターン通り、父の仇、佐藤慶の組に単身乗り込んで、敵をなで斬りにする。で、自首するために停車場を朝丘雪路と二人行く雷蔵がまたいいね。三波春夫浪曲とか、成田三樹夫が若いし悪役じゃない(雷蔵の組の幹部)とか、そういうこともちょっとたのしめる。とはいえ、鶴田浩二のヤクザ映画と比べると少しヤクザっぽさに欠け、実録路線のヤクザものに比べると迫力に欠けることは確か。