クララ白書 ぱーとII

クララ白書 ぱーとII』氷室冴子コバルト文庫、1980

氷室冴子追悼記念、というわけではないのだが、なぜか家にあった本。しかもぱーとIIだけで、一巻はない。裏見返しに値段が書いてあるので、古本屋で手に入れたらしいのだが、家にあった経緯は不明。帯には少女隊主演で映画化されたときの広告がついている。

札幌にある中高一貫の全寮制女子校のおはなし。ほどよくぬるいテイスト、ちょっと丸っこい顔の挿絵、80年代というかちょっと70年代を感じさせる小説である(といっても「ディスコ」とか一応出てくるが)。「りぼん」を読み慣れていた読者には抵抗なく受け入れられただろうと思う。このジャンルが、まだラノベではなくて「ジュニア小説」という名前で呼ばれていたころで、巻末のコバルトの広告には、佐藤愛子、富島健夫、佐伯千秋、川上宗薫といった名前が見える。

軽い本文に比べて、やたら醒めた感じの著者あとがきが妙に不釣り合いで、寺山修司とか、羽中ルイとか、そういう人々に近いような目を感じる。あるいはもっと古い、(本文にも名前が挙がっている)吉屋信子とか、高畠華宵とか、そういう人たちの影響もあるかもしれない。いろんな意味でこの時代のポートレイトみたいな本。