同盟漂流

『同盟漂流』船橋洋一岩波書店、1997

出たばかりの時に読んだので、それから10年以上たっていることになる。しかし、この本の価値は少しも古びていない。この本が提起している基本的な問題はいまでも解決されていないのである。

日米同盟に対する本書の視点は、三つ。沖縄問題、北朝鮮問題、中国問題である。沖縄問題には一番多くのページが割かれているが、この本は普天間基地の移設案が日米で合意されたすぐ後で書かれた。しかしそれから11年もたった現在、移設計画の詳細すら決まっていない。米兵の沖縄での事件は相変わらず続き、火種はまったく消えていない。北朝鮮問題は、日本の頭越しに米朝で交渉が行われ、日本は放置状態。中国と日米同盟の関係も不安定なままである。日米同盟は、大きな実態が不安定な基礎の上に乗っかっているという「逆ピラミッド」だというウィリアム・ペリーの言葉は今でもそのままあてはまっている。

著者の視点はバランスが取れ、的確。取材は後半で綿密。分析は精緻。この分野での記念碑的な名著といわれるにふさわしい。しかし、本書に登場するような、これだけ先が見える、有能な人々が力を傾けていて、なお日本にとっての最も重要な外交問題がフラフラしているという事実には、ほとんど徒労感のようなものを感じる。