伝七捕物帳 老母思いの泥棒兄弟

伝七捕物帳」29話 「老母(はは)思いの泥棒兄弟」、中村梅之助高橋長英、今村民路ほか出演、斎藤光正監督、1973

これも脚本池田一朗、監督斎藤光正コンビの作品。ゲストは、玉川良一山谷初男高城淳一。老母孝行の玉川良一山谷初男兄弟はじつは泥棒。赤鼻の伍平に見つかって逃げる途中でたまたま忍び込んだ佐倉屋の蔵で盗んだ三両の小判が偽金だった。佐倉屋は偽金造りに手を染めていた。伝七はそれを知ったが、佐倉屋の蔵は加賀藩の御用蔵にされてしまい、町方は手を出せない。捜索を止めようとする奉行の遠山様に、伝七は十手を返上して単身佐倉屋に殴り込む、という話。

23話「若君暗殺」ほどではないが、この話もよくできている。伝七と佐倉屋がお互いの考えを読んで、神経戦をやる緊張感がきいている。なにより十手を持たずに蔵に殴り込む伝七の口舌がビシッと決まっている。伝七は十手を持っていないので、最初素手で刀を持った侍たちと渡り合っているのが危なっかしくて仕方がない(途中で万力鎖を出すけど)。劣勢になってきたところで、遠山様自らご出馬で佐倉屋は捕まっておしまい。しかし遠山様が捕り物に出てくるのはともかく、供の者が同心の早瀬様と捕り方だけというのはこれいかに。最後に遠山様が伝七に十手を返してやるのをキャッチする、二人の呼吸が渋い。