鉄塔 武蔵野線

鉄塔 武蔵野線」、伊藤淳史内山眞人ほか出演、長尾直樹監督、「鉄塔 武蔵野線」制作委員会、1997

銀林みのるの原作は未読。しかしこれは佳作。「武蔵野線 75-1」の鉄塔に偶然出会った子供が仲間の子供と二人で「武蔵野線 1」を求めてひたすら鉄塔をたどって走る話。主役は子役時代の伊藤淳史だが、ほんとうに表情がいい。無駄なところのない顔、鋭い眼。真っ黒に日焼けした肌と泥だらけの服がよく似合ういい顔。この子供がひたすら鉄塔を追いかけるという話がいい。

親の離婚や父親の死というエピソードがまぜてあるが、それが感傷的に流れずにきちんと話を締めているのはさすが。いろんな邪魔が入っても、この子供はめげないのである。漢だなあ。途中で仲間とはぐれ、自転車をなくし、靴の片方もなくしてやっとたどりついた「武蔵野線 4」で電力会社の係員に捕まってしまうところは、もう気持ちをわしづかみにされた。

そしてラスト。やっとたどりついた「武蔵野線 1」は鉄柵に囲まれた変電所の中。しかしあきらめない子供がまたよし。寸止めの結末が何ともいえない味になっている。よい余韻の残る映画。