翼の凱歌

「翼の凱歌」、岡譲二、月田一郎ほか出演、山本薩夫谷口千吉監督、東宝、1942

戦争中に制作されたヒコーキ映画。主役は一式戦隼。墜落事故で死んだパイロットの妻が、自分の子供と機関士の子供を兄弟として育て、やがて兄は陸軍のパイロットに、弟は航空機メーカーのテストパイロットになり、隼の開発にともに尽力するのでした、というお話。

脚本は外山凡平、黒澤明の共同執筆だが、前半の兄弟の成長のところがタラタラしてるし、最後に隼でB-17を撃墜するところも劇としては蛇足。あまりいい出来の脚本とはいえないと思う。特撮は円谷英二で、なかなかいいが、B-17を撃ち落とす場面は、B-17が全然動かないし、撃ってこないしでいまいち迫力に欠ける。テーマ曲は、かっこよくていいなあと思っていたら、佐藤惣一郎作詞、山田耕筰作曲ということで、これはさすがという感じ。
http://rasiel.web.infoseek.co.jp/uta/tsubasanogaika.htm

俳優の演技はかなり大根で、芝居部分はどうかと思うが、主役はなんといってもヒコーキ。空撮部分も多く、隼がびゅんびゅんと空を飛び回ってくれている。急降下の場面は、そこは実写じゃないとわかっていても、「ああ、そんな飛び方じゃ墜ちちゃうよ」と声を出したくなる。塗装されていない銀色の隼が空に映えて(当然モノクロだが)美しい。飛行機好きな人には貴重なお宝映画。