山下清の愛したニッポン

ハイビジョン特集 山下清の愛したニッポン」、ディレクター:五十嵐久美子、NHKBS2、2008.5.2

もともとNHKハイビジョンで今年の3月に放送された番組らしいのだが、見たのはBS2に落ちてきた放送。よってハイビジョンではない。どーせ家にはハイビジョン放送をそのまま録画できる機械はないので生で見ないとしょうがないのだが。
じつは山下清という人に関して、この番組を見るまではほとんど何も知らなかった。放浪を続けた画家で、知的障害があったという程度の知識である。テレビドラマの「裸の大将放浪記」シリーズ、映画、舞台もまったく見たことなし。

しかしほとんど予備知識のないままでこの番組を見たのは、結果としてあたりだった。とてもよく作られていて、主に本人筆による記録、貼り絵、山下清と何か関わりを持った人たちのインタビューで構成されている。ドラマのように本人の人となりを直接造形するのではなくて(それをやるとかなり作り事っぽくなってしまっただろう)、事績を忠実に追うことを通じて山下がどういう人だったのかを浮かび上がらせる方法に説得力を感じた。山下の日記を朗読する渡部篤郎も上手い。そして、やはり圧倒的な力があるのは、山下の貼り絵である。緻密で、色彩にすぐれ、何より見ていて楽しい。

また山下の思い出を語る人たちが、とてもなつかしげに語っていることも印象的。山下がすでに有名人になってから、山下を長く泊めていたところの主人が、「あれだけ長く居座っていたのにまったく邪魔だとか、嫌だという感じを受けなかった」と不思議そうに語っている場面もよい。説明できないような人間的魅力を持った人だったのだろう。著作があることがわかったので、今度読んでみることにする。