変身

『変身』嶽本野ばら小学館、2007

嶽本野ばらを読むのは初めて。というか図書館でジャケ買いならぬ、装丁借り。しかし結果的には当たり。かなりおもしろく読めた。
内容は、タイトルから想像したとおりカフカのパロディだが、主人公は醜くなるのではなくて、不細工男からいきなりイケメンになっている。まるで売れてない漫画家だったのがイケメンになったとたんに、マンガはバンバン売れて、女にもモテモテなのだが、女については食いつきはいいものの、主人公の正体(不細工だったころの内面)がばれると速攻で「キモい」「重い」「30過ぎて童貞はありえない」とフラレてしまう。で、主人公は美形ゆえにつくられた偽りの人気を捨て、路上で自費で作ったマンガを売っていたころの自分に戻ろうとするのであった、というおはなし。
主人公が美形に変身する前からマンガの唯一の読者でファンだった「ゲロ子」がめちゃくちゃいい味を出してる。もちろんゲロ子は不細工時代の主人公も「ブスだ…」としか思えないような容姿で、なぜか侍とヤクザ者が混じったような変な時代劇調の言葉しか使わない。しかし主人公のマンガと魂で結ばれているのはゲロ子だけなのだ。
パロディ元の「変身」の救いようの無さと一脈相通じているのだが、ゲロ子とカルーセル(メリーゴーランドのことをオランダ語でそういうというのははじめて知った。小説中でカルーセルといえばカルーセル麻紀のことだと思ってる無教養な女子高生が出てくるが、自分もそのレベルとは…恥ずかしい)が、この話の救いの光。としまえんのカルーセルエルドラド、必ず乗りにいこうと心に誓ったのであった。それと、下妻物語、ほかの著者の作品も必ず読まなければ。