ヒラリーをさがせ!

『ヒラリーをさがせ!』横田由美子、文春新書、2008

日本の女性国会議員についてのルポルタージュ。野田ゆかり、小池百合子高市早苗片山さつき佐藤ゆかり丸川珠代蓮舫太田和美といった人々が取り上げられている。取材対象になった議員のことはよく調べられているし、インタビューもきちんと突っ込まれている。読んでおもしろい。わかることは、「女であることは、最初に議員に当選することについては有利な材料になるかもしれないが、その後出世の階段を上がっていく時には有利でない方向に作用しがちだ」という、政治業界以外の世界でもよくある話。著者自身が、政治、官僚、ビジネスのような女性のライターがあまりいない分野にいることの苦労をいろいろ書いていて、その部分もおもしろい。また、この本で取り上げられている女性議員が「女だということで差別されている」ことをあまり言い立てない(フェミニスト的な主張を表に出さない)人ばかりだということも興味深い。まあそんな人は日本の政治業界では成功できないのだろう。
この本の問題としては、大勢の中の一人である国会議員はともかく、知事や市長のような首長(首長は、それ自体が出世における「上がり」のポストだし、政策実現にはより有利なはず)の取材をしていないこと、野党議員への言及が少ないのは仕方ないが辻元清美のような毀誉褒貶はあっても行動力のある議員(著者自身、本の中で公明、共産、社民の女性議員はほとんどお飾りでどうでもいいが、辻元は例外といっている)にあたっていないこと、取り上げている議員への言及がいろんな箇所でバラバラにされていて、章ごとのまとまりも薄いので、文章は読みやすいのに、何が書いてあったのか頭に入りにくい、というようなところ。それでも本は十分におもしろかったので、間をおいた上で(特に政権交代があった場合は)ぜひ続編を書いてほしい。