日本海大海戦 海ゆかば

日本海大海戦 海ゆかば」、三船敏郎沖田浩之ほか出演、舛田利雄監督、東映、1983

これは初見。基本的にお話が、沖田浩之が演じる軍楽隊の水兵を主人公にしているので、司令官や参謀の立場から海戦の全容を見るのではなくて、船底の水兵の立場で虫瞰図的にながめたものになっている。脚本は笠原和夫なので、ただの戦意昂揚映画みたいなものにはしたくなかったのだろう。
しかし見ているほうとしては、沖田浩之と女(三原じゅん子)とのエピソードとかあんまり興味はわかない。軍楽隊員へのイジメとかも(途中からはなくなるが)気が滅入る。肝心の海戦の場面だが、特撮監督が中野昭慶でこれはよく撮れている。しかしカメラは沖田浩之らがいる副砲の砲員の視点にたっているので、こっちの弾丸があたっているかどうかはさっぱりわからず、こちら側は敵の砲弾でボコボコにされ、水兵は血みどろになってバンバン死ぬ場面が連続。最後になって「勝ちました」というテロップが出ても、全然勝った感じがしない。ラストで沖田浩之がトランペットを吹くところも、勝利の凱歌ではなくて鎮魂歌のようだ。1983年に撮られた映画なのでこうなってしまうのだろうが、あんまり爽快感はわかない、というより見ているほうが鬱になる。
ちなみに題名に「海ゆかば」とあるが、日露戦争の時期に現在知られている曲としての「海ゆかば」はない。軍艦マーチも現在とは調性の違ったバージョンのものしかなかったので、厳密にいうとこの映画で演奏されているバージョンは変。