ネット右翼とサブカル民主主義

ネット右翼サブカル民主主義』近藤瑠漫、谷崎晃(編著)、三一書房、2007

ネット右翼」現象についての左翼のぼやき本。一章は「なんでネット右翼ができるのに、ネット左翼はないのか」という問題に答えを出そうとしているのだが、うまくいっていない。ネット右翼は非理性的で左翼は違うから、といいたいらしいが、そうか?70年代以前の学生運動の参加者が「理性的」だったとはあまり思えないが。それにネット右翼はもともと右翼活動をやっていた人がなっているのではないのだから、ネット右翼に対して、実際に社会運動をやっている左翼を対称的に引き合いに出しても無意味。なぜネットで左翼が惹きつけるような力をもっていないのかを考えないと話にならないだろう。サブカルの中には左翼系のネタも山ほどあったのだから。
二章はちょっとどうでもいいとして、三章は輪をかけてひどい。もはや分析にもなっておらず、左翼の立場からネット右翼を罵倒しているだけである。姜尚中がネットで叩かれていないのは、きちんとした論理性と説得力があるからだ、といってるが、そうか?姜はネットでガンガン叩かれていると思うし、説得性はともかく、言っている理屈は穴だらけの人だろう。最後に出している「処方箋」もあまり有効性がありそうには思えない。結局、ネット右翼がいっぱいいるのに、自分たちは少数派から脱出できなくてくやしいよ、というぼやき以上の内容ではない。
というか、この本の一番の問題は執筆分担が書いてない、ということ。著者紹介は巻末に出ているのだが、誰がどの章を書いているのかわからない。いちおう本を出しているんだから、これがはじめての本というわけでもないのだから、出版物の基本的マナーくらいきちんとしましょうよ。