薄桜記

薄桜記」、市川雷蔵勝新太郎ほか出演、森一生監督、大映、1959

以前に勝新太郎の集中上映会があったときにこれを時間の都合で見られなかった。時代劇専門チャンネルありがとう。この年の大映時代劇にしてはカラー作品。発色はきれい。
市川雷蔵は丹下典膳、勝新太郎堀部安兵衛。丹下典膳は旗本だったが、高田馬場の決闘で、たまたま通りがかったところ決闘に関わらないようにその場を立ち去るが、そのことで道場の門人たちから恨みを買い、妻を犯され、さらに妻のことを隠そうとして義兄に片腕を切り落とされ、どんどん悲惨な境涯に堕ちていく。で、上杉家の家老千坂兵部に療養先から呼び返され、吉良上野の用人になっている昔の仇を討って犯された妻の復讐をしようとするが、仇二人を木刀で撃ったところを短筒でズドン。瀕死の状態で臥せっているところに、さらに残った仇が押し寄せてくる。ほとんど立ち上がることもできないので、寝た姿勢、半身起こした姿勢で斬りあい。このあたりは見ているほうが痛々しい。丹下の看病をしていた妻も短筒でズドン。そこに堀部安兵衛がかけつけてきて、仇どもをなで斬りにし、こっちも瀕死の丹下の妻から吉良の茶会の日取りを聞きだして、討ち入りに向かうのであった、というおはなし。
旗本の身から思わぬことで零落していく市川雷蔵の暗い、それでいて誇りのある表情がいい。勝新太郎はまだこの時期は白面の善玉役でそんなに個性を出してないが、市川雷蔵との数奇な関係がよし。でもこれは市川雷蔵の映画。やっぱりこの影のある感じがなんともいえない。